手取川第一発電所と手取川ダムの立入禁止領域に潜入してみた!
手取川ダムとその発電所である手取川第一発電所の立ち入り禁止の領域に潜入してみたのでレポートします。
目次
手取川ダムと手取川第1発電所について
手取川第1発電所は日本最大の電力卸売業者である電源開発株式会社の所有する25万kWの水力発電所です。その水源は日本で4番目のロックフィル堤体の高さを誇る手取川ダム。
この手取川ダム、非常に大きく美しい岩造りのダムでダム湖からの景色も優美であり観光資源としても有用なはずなのですが、その堤体はなぜか立ち入り禁止。普段からゲートで閉ざされています。
鉄塔くん
2008年にはこのゲートを掻い潜ってロックフィル斜面でスノーボードをした跡が発見された事件もあったそうです。
またそこから1.5kmの導水路で繋がる電源開発の手取川第1発電所も普段は一般の人が立ち入ることは許されていません。
手取川ダムと手取川第1発電所の見学会
そんな謎に包まれた手取川ダムと手取川第一発電所ですが、まれに見学会が開催され係員さんの案内のもと立ち入ることができる日があります。
今回はそんな貴重な機会がありましたので参加させて頂き、許可を得た上で写真を撮らせて頂きました。
手取川ダムが立入禁止のわけ
手取川ダムには駐車場があり、専用の展望広場があります。普段はそこからでも堤体とダム湖は観ることができます。
鉄塔くん
手取川ダムは堤体の上だけが立入禁止なのです。
堤体上からの写真です。ここはすでに禁断の領域。国道157号線側に山がありそこへ登るスロープが見えます。
実はこの堤体が立入禁止になったのはこの国道側の山に原因があるのです。
以前は手取川ダムは観光地として売店などもあり堤体も自由に入れました。そしてこの目の前の山には観察舎があり自由に登ることができました。
しかしある時にその下の駐車場に駐車してあった1台の車に車に巨大な落石が落ちたのです。
幸いけが人は出ませんでしたが、その事件以降、その落石の危険領域を通って侵入しなければいけない堤体は立入禁止、また、毎年地質を調べているのですがどうも安定せず解禁されることなく今に至るのだとか。
鉄塔くん
せっかくの素晴らしい景色なのに残念なことですね。
手取川ダム堤体とローラーゲートの様子
堤体の向こう側には巨大なクレストローラーゲートが見えます。その奥にはスノーシェッドと管理棟が。
左手には153メートルの高さで岩が積み上げられています。ロックフィルは傾斜が重力コンクリートより穏やかなので高度感はそれほどありません。
よく見ると右手下に常用の吐水口があり水が流れ出ているのがわかります。ジェットバルブはついていないのですが、あまりの水圧で霧状になり虹が見えていました。
ロックフィルダムで雑草は大敵なのだそうです。間に入った雑草は成長して岩を持ち上げそこから崩落が発生する可能性があるのだとか。しかも除草剤は使えないので手作業で刈り取ります。
鉄塔くん
除草剤を使えないのは下流の水を汚染しないよう配慮してなのだそうです。
遠くからしか見えなかった巨大なローラーゲートが目の前にそびえたちます。横の管理用の階段は壁で保護されて風雪に耐えられるようになっています。
鉄塔くん
横の階段は、かつてはむき出しで冬場の風は特に大変だったのだとか。
手取川ダムの管理棟
手取川ダムの管理棟です。オレンジ色の外観が1979年の開設当時の時代のデザインを感じさせてくれます。
外観に対して二階の管理室は非常に先進的。天井に並ぶ液晶モニタが様々なカメラやセンサーのデータを表示し下の端末でゲートの操作などを行うことができます。
手取川ダムからの導水管は手取川第1発電所に接続されておりそこへの流量の制御、また、下流で合流する手取川第2ダムと大日川ダムとの流量の摂政もあるのだとか。
こちらは警報システム。放流の際に川の流域に放送するための設備です。
鉄塔くん
レトロな外観ですがまだまだ現役なのだそうです。
ちなみにこの手取川ダムは非常に大規模なため国土交通省管轄となります。北陸では九頭竜ダムが同じく国の管轄となっています。
手取川第1発電所
さて次は電源開発株式会社の手取川第1発電所に行ってみましょう。普段は国道157号線からの入り口からは一般者立入禁止ですが今日は特別です。
手取幹線の1番鉄塔です。手取り幹線は南金沢変電所からの154kVの送電系統で以前は手取りキャニオンロードのサイクリングの記事で紹介しました。
鉄塔くん
普段は上からしかみられないのでこの角度から見えるのは感動的ですね。
手取川第1発電所入り口の模型
手取川第1発電所に入るとまず目に入るのがタービンの模型。25万kWは2台のタービンによって作り出されます。導水管から水車がよくわかる断面模型となり、仕組みがよくわかります。
鉄塔くん
ちなみに全く同じものが九頭竜ダム管理事務所でいつでも見れますので興味があれば是非どうぞ。
タービン室へ行く前に手取川総合開発事業についての説明をしてもらえました。
手取川第1発電所・手取川第2発電所・手取川第3発電所のスペックや先で合流する大日川の大日川ダムとの水量の関係などが興味深いです。
鉄塔くん
第1は電源開発ですが、第2と第3は北陸電力管轄となります。
こちらは先ほどの手取川ダムとの導水管。1.5kmあり山の中を貫いています。途中に垂直の穴があるのがわかります。
鉄塔くん
この穴は停止時に水圧を抜くためのものなのだそうです。
導水管の先の取水塔も電源開発社の所有物。調整機構がついており水面に近い暖かい水の方から水を導水管に取り入れるように出来ています。
手取川第1発電所 タービン部
さて、いよいよ発電所の中枢、タービンに向かいます。建屋の上には巨大なクレーンが常設されておりメンテナンスに備えられるようになっていました。
これが手取川第1発電所のタービンです。ちょうど丸い円筒が2つ並んでいるのがわかります。
円筒へはブリッジが接続されており、その下には導水管が。
鉄塔くん
1.5km先からの手取川ダムの水がここに運ばれてくるわけですね。
発電は常時行われているわけではなく、買取事業者である北陸電力からの要請で水を流したり止めたりします。
鉄塔くん
水はずっと流れているのでなのでずっと発電しておけばいいのでは?。
と思いますが、実はこれは火力発電側の事情で、あちらは一度発電を開始したら簡単には止めることはできません。そこで全体の需要に応じて停止しやすい水力側を入り切りすることで発電量を調整しているというわけです。
幸い今はそんな事情でタービンは停止中。
鉄塔くん
停止中の駆動電力は反対に北陸電力から購入してるのだとか。
先ほど引きとめられている手取幹線鉄塔が見えましたがあれは送電用でもあり受電用でもあるわけですね。
1号水車前。石でできたカマクラのような入り口が中央の水車に伸びます。降りてみましょう。
これが手取川第1発電所1号水車のシャフトです現在停止中ですがこうやって間近に見ると圧巻です。
鉄塔くん
もちろん発電中は近寄ることはできません。
終わりに
ということで今回は普段入れない禁断の領域である手取川ダム堤体と管理事務所、手取川第1発電所内部の潜入レポートでした。
電源開発株式会社は元々は政府が66パーセント出資の半分公的な会社でしたが、現在は完全に民営化されています。そんな中でもこういった一般公開を行っていただけるのは嬉しいことですね。
鉄塔くん
たまにこういった機会がありますので国土交通省河川国道事務所のホームページなどでチェックしてみてください。
また手取川開発事業についてはすぐ近く手取川開発記念館)で無料で展示がされており、詳しく知ることができます。