丘の上の加賀変電所(西)と辰巳ダムからの鉄塔群の展望そして新辰巳発電所(石川県金沢市七曲町)

金沢市七曲町にある北陸電力加賀変電所。航空写真でみると東西2つの場所にわかれているのがわかります。加賀変電所の東側は超高圧系統である500kV専用施設ですが、今回は西側にある275kV/154kVの方の加賀変電所を紹介します。

概要

接続図

加賀変電所周辺接続図(クリックで拡大)

周辺設備

犀川の上流、辰巳ダム。そのすぐ北側の丘の上に加賀変電所はあります。入り口は辰巳ダムの手前の売店の交差点から。上には一般農道もあり、丘の上までは自由に入ることが出来ます。周辺も農道なので北側と東側以外は横まで大丈夫です。

加賀変電所(西)

ちなみに周辺には辰巳ダムの他に新辰巳発電所もあり丘の上から導水管が落ちてきていますが、接続図を見てわかる通り電気的にはここ加賀変電所とは直接接続されていません。(辰巳ダムに至っては水量調節専用ダムであるため発電設備も無かったりします)

軽く説明すると南からのオレンジ色の線が上寺津発電所からの上寺津線(1回線系統)、途中の紫は新内川支線で直接上寺津線に接続、そのまま新辰巳発電所に入り、同じく新辰巳発電所から新辰巳線(1回線)が同じ送電鉄塔に併架されて5本目まで行き、そこから独立して北に進みます。上寺津線・新辰巳線ともに1回線なので新辰巳発電所から2回線の系統が出ているように見えますが、実は違う系統というわけです。

加賀変電所のヤードブロック

ブロック的には中央でわかれており、東側が275kVブロック、西側が154kVブロックとなり東西に巨大な変圧器が並びます。

また離れた東側の500kVの加賀変電所とは地中ケーブルで接続されています。

加賀変電所154kVブロック

加賀変電所154kVブロック

では北西から順番に見ていきましょう。

御所線 (接続図 緑)

御所線1番鉄塔 微妙なアンバランスさが個性的

まず154kVブロック北西端から出ているのが御所線です。その名の通り御所変電所に接続される系統です。2番鉄塔がすぐ横に角度を付けて設置してあるので、この一番はどことなくアンバランスな形。角度鉄塔にするまでもない程度だったのでしょうか。まるで腕金が左からの風でたなびいているような個性的なデザインです。

御所線1番プレート1994年9月設置

設置は1994年9月。こう長は11.1kmです。御所変電所は山側環状沿いにあり、この御所線は卯辰山周辺でよく見かける送電系統です。俵町付近で関西電力 北陸幹線と交わる部分もありなかなか存在感があります。

南金沢線 (接続図 水色)

南金沢線1番鉄塔

加賀変電所の東から南西、南にかけてぐるっと回っている送電線があります。引き留め箇所は上記の御所線の反対側。同じく154kVの南金沢線です。名の通り南金沢変電所に内川ダム、倉ヶ嶽獅子吼尾根を越えて接続されています。

154kVなのに敷地内引き留めのためかやたら胴長短足に見えますね。

南金沢線1番プレート1975年6月

設置は1975年6月と御所線と比べかなり古い時期なのがわかります。

南金沢線1番鉄塔結界 渦巻き模様が美しい

正門前ですがゲートより外なので結界には自由に入れます。螺旋模様がとても美しい結界です。

この南金沢線、あとで紹介する加賀東金津線と併架の4回線になり変電所の丘を出発することになります。275kVは東側なのでそこまで2本、ここ154kVブロックから延長されているというわけですね。

ということで2番はすぐ南西側にあります。

南金沢線2番鉄塔 3角腕金の重角度鉄塔

90度の重角度鉄塔です。まるで巨大な矢印のような3本の腕金が特徴。シルエットが太陽の塔を思わせます。

結界も自由に入れますのでぜひ見てみてください。

南金沢線2番鉄塔 結界。三角腕金が方位磁石の矢印のよう

南金沢線1番も印象的な結界でしたが2番もとても美しい結界です。均整の取れた腕金の矢印が下から浮かび上がります。

南金沢線2番プレート1975年6月

プレートは当然同じ1975年6月でした。

南金沢線は加賀東金津線1番引き留め部分へ。奥の赤白は中央幹線63番最終

さて、ここで90度折れた送電線はいよいよ加賀東金津線の1番鉄塔と合流するため東に向かいます。

それでは東側、275kVブロックに行ってみましょう。

加賀変電所275kVブロック

加賀変電所275kVブロック

砂利の林道を少し歩くと275kVブロックのスイッチヤードに引き留められている4回線鉄塔が目に付きます。これが加賀東金津線の1番鉄塔です。ゲートからは上部2回線に引き留められており、下部2回線は上記の南金沢線が接続、更に90度角度を変えています。

奥に見える紅白鉄塔は中央幹線の最終鉄塔63番となります。

加賀東金津線1番・南金沢線3番鉄塔(接続図黄色・水色)

加賀東金津線1番・南金沢線3番鉄塔

加賀東金津線は福井県あわら市の東金津変電所と接続される275kV系統です。経路的には加賀幹線と経路が似ていて加賀地方の山を越え152本目で最終となる長距離系統。元々はその先の新福井東金津線も含め、隣の中央幹線の一部だったのだそうです。

東金津線の終点については「加賀東金津線の終着点 北陸電力 東金津変電所(福井県あわら市)」の記事を参照。

十字型鋼採用の加賀東金津線1番/鉄塔南金沢線3番鉄塔

この加賀東金津線1番鉄塔も真下まで行くことが出来ます。近づいたらわかるのですがよく見るヘの字の山形鋼の骨組みではなく強度がある十字型の十字型鋼で出来ているのがわかります。4回線なのと南金沢線の重角度鉄塔であること、次の辰巳ダムの2番鉄塔への経間が長いことなどが関係しているのでしょう。武骨な感じがとても格好いいです。

クチバシ付きの加賀東金津線1番/南金沢線3番鉄塔

ちなみにこの鉄塔、クチバシ付きです。レッドヘッドにとんがりマウスがよく似合います。横からくる南金沢線からの架空地線の関係でしょうね。

加賀東金津線1番/南金沢線3番鉄塔プレート(1974年7月・1975年6月)

プレートは加賀東金津線が1974年と南金沢線より1年早い年代が書いてありました。隣の中央幹線63番は4回線鉄塔なのに2回線しか使っていないので、このあたりの中央幹線の変遷が気になりますが、残念ながら手元資料では詳しくはわかりませんでした。

中央幹線(接続図 紫)

西側275kVブロックより中央幹線63番引き留め

さて最後は一番奥、中央幹線63番です。この変電所唯一の赤白鉄塔。

中央幹線1番は航空障害灯付き。架空地線が未使用の腕金に付いている

60メートル超えなので夜は航空障害灯が光ります。見ての通り架空地線が一番上の未使用の2回線腕金を利用しているのがわかります。辰巳ダムまでの距離があるので頭よりも強度がある未使用腕金を利用したのでしょうか。

さて、変電所側からはこんなところです。加賀変電所の面白いのはその南側の辰巳ダム側に広がる鉄塔群です。ダムに降りてみましょう。

辰巳ダムより

辰巳ダムについて

辰巳ダムより加賀変電所 左が加賀東金津線1番・右が中央幹線63番最終

辰巳ダムは加賀変電所を降りたすぐ下にあります。自由に堤まで降りることが出来ます。洪水調整専用ダムで普段は水はたまっていません。3種のゲート、クレストゲート(一番上の溢れる穴)・コンジットゲート(中央部調整用の穴)・オリフィスゲート(最下部常時放流用の穴)が全て備わった見るに立派なダムです。スペックは堤高47m・堤長195m・貯水量6M㎥。

水が溜まっていないのにちゃんとダム湖には「犀清の湖 (さいせいのうみ)」という素敵な名前がついています。 一度溜まっ たところを見てみたいですね(そういう時はかなり非常時なので鑑賞どころではなさそうですが)

加賀変電所の2本の鉄塔、左が加賀東金津線1番・右が中央幹線63番最終が伸びてきています。

辰巳ダム横の鉄塔接続

複雑な辰巳ダム南側鉄塔群の接続(クリックで拡大)

さて、見るも圧巻な辰巳ダムからの鉄塔群。複雑過ぎてどうつながっているのかはひと目ではわかりません。簡単に線を書いてみました。

手前の4回線2系統が上が加賀東金津線、下が南金沢線です。その奥の2回線1系統が中央幹線。

基本的に並走して犀川を渡り上流に向かうのですが、よく見ると南金沢線だけが4番目(南金沢線番号で言うと6番目)で、角度をつけ南西に逸れて行っているのがわかります。

加賀東津線4番/南金沢線6番 下部だけ角度腕金

加賀東金津線4番/南金沢線6番 ちょっと近づきにくい箇所にありますが、これも十字型鋼でとても重厚感のあるかっこいい鉄塔です。南金沢線は直接、内川ダム北や倉ヶ嶽尾根をを山越えしていくのでこの経路をとります。

対して加賀東金津線は南側を目指すのでしばらくは犀川に沿うように進むというわけです。

辰巳ダムから見えるその他の鉄塔

それにしても中央幹線・加賀東金津線を双眼鏡で追いかけてもその先がよくわからないのです。その原因はさらに上流で犀川を横断している関西電力 大黒部幹線です。

犀川上流側には関西電力が大黒部幹線が横断

実は視界の中にはこの大黒部幹線が紛れているのです。わからないはずですね。

こんな感じで犀川はここ辰巳ダムから上流へ、加賀東金津線(南金沢線)・中央幹線・大黒部幹線・加賀幹線の順で送電線の横断があります。下流方向には冒頭の上寺津線(新辰巳線)・北陸幹線・長坂田上支線・西金沢連絡線・松任連絡線・新小松線の順です。これは覚えておくと面白いと思います。

加賀変電所(東)よりの500kV系巨大鉄塔群が見える。手前加賀幹線、奥が加賀福光線

辰巳ダムからは加賀変電所(東)からの500kV鉄塔もよく見えます。手前が加賀幹線、奥が加賀福光線です。反対側には寺津線の烏帽子鉄塔(ネコ鉄塔)がちらりと見えたりと鉄塔ファンにとっては時間を忘れることができる静かな良い場所です。

新辰巳発電所

変電施設

辰巳ダム東岸にある新辰巳発電所

さて辰巳ダムの堤を渡って東側に歩いてみましょう。道路側に上りすぐ左手に新辰巳発電所があります。

実際の発電所は崖の下にあり、見えるのは変電施設。横に立っているのが新辰巳線1番鉄塔です。

水車ランナの展示。左は新辰巳・右は新上寺津発電所のもの

駐車場もあり傍らには使い終わった水車ランナの展示や金沢市企業局の運営しているダムや発電所の説明板があります。

導水管と発電所

導管は上流の寺津から

巨大な赤錆色の導管が犀川東側を通ってきています。国土地理院地図によれば取水口は上流の寺津の辺り。ここで犀川からかなりの高さなのですが、取水口ではその犀川が同じ高さになると思うと面白いですね。

下を覗き込むと発電所の建屋が

導管の先を覗き込むと新辰巳発電所の建屋が見えます。変電施設の横には階段が。降りてみましょう。

残念ながらここから先は入れない

古い石垣の壁の階段を降りるとゲートが。発電所に近づけるのはここまでです。少し回り込むと横の鉄塔の下まで行けます。

新辰巳線と上寺津線

上寺津線27新辰巳線1併架鉄塔

横に立っている鉄塔は2回線6本の送電線ですが、実は系統的には2本で一つが新辰巳線、もう一つが上寺津線でそれぞれ1回線の系統となります。

上寺津線の番号が添える様に貼られているのがおもしろい

上の番号を見るとたしかに1番鉄塔を示す「1」の傍らに小さく添えるように27番の文字が書かれています。

銘板はそれぞれ反対方向に

方向的には上寺津線が新辰巳発電所に入り込み、新辰巳線で出ていく形になります。それぞれが分岐するのは4本先。そこから上寺津線は南下、新辰巳線は北上します。

上寺津線と新辰巳線が折り返している

流れとしては上寺津発電所からの電力にここ新辰巳発電所に立ち寄りさらに加え、北方向に送っている形です。新辰巳線は太陽が丘の辺りで埋設となります。おそらくその近くの田上変電所に接続されているものと思われます。

辰巳発電所案内(クリックで拡大) 市営発電所概要(クリックで拡大)

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