幻の変電所 北陸電力御所変電所を見ることが出来る唯一の場所とは(石川県金沢市御所町)
石川県金沢市御所町にある北陸電力 御所変電所は鳴和台と呼ばれる山の上に位置し、周囲からは全く見えることのない「幻の変電所」です。今回はそんな御所変電所を唯一見ることが出来る地点とそこから延びる送電系統を紹介します。
北陸電力 御所変電所の位置と系統図
御所変電所の位置
御所変電所の系統図
御所変電所の正門
御所変電所の正門は鳴和台住宅地にある祭儀場の横のゲート1箇所のみで、そこは基本的には閉鎖されており一般人は立ち入ることは出来ません。
変電所やや高台にある鳴和台よりさらに上にある為、そこから見えるのは、南西から来ている鉄塔の頭くらいです。
また山側環状線が東側に通っていますがそこからも隣接鉄塔は見えるのですが、肝心の変電所は「くぼみ」に設置されているため、その片鱗すら確認することが不可能なのです。
御所変電所唯一の観察ポイント
そんな存在はわかるが全く見えない「幻の変電所」を唯一観察できるポイントが存在します。山側環状線、東長江インターから降り東長江交差点から西に、次の御所町東交差点との間に星稜大学球場と書かれた細い道があります。そこを上ります。
車1台だけが通れるとても細い道です。左手には北側から伸びてきている4回線鉄塔、その奥には御所の町並みが見え始めます。
やがて三叉路に。ここを真っ直ぐ進むのですが、草が多く車での侵入は傷を覚悟しなければいけません。右に曲がると野球場です。
やがて道の先に、先ほど左に見えた4回線鉄塔の次の鉄塔が見え始めます。御所変電所はその向こうです。
頭の番号を見ると、1番鉄塔かと思いきや、まだ2番。この先にもう1本あるということです。
やがて2番鉄塔の足元で道は終わりになっています。そのまま2番鉄塔の結界の中へ。足についているはずのプレートは若番方向にあるので向こう側にまわると確認できます。
2番鉄塔の正体が判明しました。御所北金沢支線2番・御所浅野線2番です。これが御所変電所から山側環状線を超えて北側の御所の山の上に続いているわけです。御所浅野線は以前の「 北陸電力 北金沢変電所と浅野川トライアングル」の記事で紹介しましたね。
東長江インターの中にある3番鉄塔から上方向に来た送電線を「くぼみ」にある御所変電所に落とし込んでいる2番鉄塔。女鉄塔のガイシが急角度に縦に折れ曲がっています。よく見ると上下の系統でガイシの数が違うのがわかります。
2番鉄塔結界内。片方の腕金が四角になっているのがわかります。僅かですが水平角度もかえているようです。
2番鉄塔のその先へ
結界の奥には1番鉄塔が見えます。草をかき分けて進みましょう。夏場は虫よけがあるとよいと思います。
御所北金沢支線1番・御所浅野線1番併架鉄塔の番号札は、これだけなぜか縦型。
やがて草陰に施設の影が見え始めます。とうとう幻の御所変電所を目の当たりにする時がきました!
幻の中から
ジャジャーンと頭の中で鳴り響きます。これが幻の変電所。北陸電力御所変電所の姿です。
左には山側環状から見えたように鉄塔が3本。手前から4回線、2回線、2回線と引き留められています。
一番手前のは今たどってきた御所北金沢支線1番・御所浅野線1番併架の1本です。その奥の2本は?
山側環状をはさんだ反対側の鉄塔を見ましょう。左にコックさん鉄塔、ガイシの数は10あるので154kV。 加賀変電所から来る御所線です。右のとんがりの角度鉄塔はガイシ数5で77kV。こちらはすぐ近くの浅野川上流にある東金沢変電所からの東金沢線でしょう。
番数を確認します。御所線のほうは31番、つまりこちらが老番なので、変電所横の引き留め鉄塔は32番となります。
右の東金沢線は2番、ということはこちらが若番なので引き留め鉄塔は1番で確定です。
ということで御所線32番と東金沢線1番です。ガイシの数から手前の御所線が154kV,奥の東金沢線が77kVでしたね。
もう一度手前に目を戻しましょう。
御所北金沢支線・御所浅野線の併架された1番鉄塔の引き留め部分です。やはり上下でガイシの数が違い、上の御所北金沢支線は10個なので154kV、下の御所浅野線が5個なので77kV、ゲートには奥から御所北金沢支線、御所浅野線の順に並べられています。
ということは、特別高圧の154kV系統4回線はゲートの中央に集められているということになります。よくみるとそれに対応して中央4回線12本のスイッチヤードにはパイプ配管が見えます。これがGIS、ガス絶縁開閉装置です。
それでは手前と奥の77kVのほうはどうなっているのでしょう。ゲートの下には・・・なにもありません!
そう、これは地中に埋設されています。どこへ行っているのかというと。
御所変電所の中央に道があり、その奥には小型の変圧器。つまり一番手前の奥の御所浅野線と東金沢線は地中ケーブルを通って道の反対側の77kVヤードに行っている訳ですね。
この丘を降りればそれが確認できるのですが、残念ながら草が生い茂っておりこれ以上の接近は不可能そうです。それでは引き返しましょう。
御所北金沢線を追う
帰り際、右手には4回線の御所北金沢浅野線が並びます。一旦インターに降りて山の上へ。
その先、丁度山の上の鉄塔で併架されていた4回線が分離しているのが見えます。多分6番目です。少し山側環状線を走ってみましょう。
山側環状線を小坂へ進んで振り返るとたしかにこの鉄塔で御所北金沢支線と御所浅野線が分岐しています。
番号は確かに6番でした。
下側2回線、御所浅野線は小阪古墳群の山を浅野川方向に降りて行っています。この先は以前の「 北陸電力 北金沢変電所と浅野川トライアングル」の記事で紹介しています。
それでは他方、御所北金沢支線はどこに向かっているのでしょう。この先、森本付近にそのような送電線は無いはずです。
東長江から数えてトンネル2つ北、神谷内インターのランプ内にその鉄塔はありました。山の上から降りてきた御所北金沢支線はこの鉄塔で、地中に引き下げられています。
ランプの下は道路が通っているので若番方向プレートの確認は可能です。「御所北金沢支線」。間違いありません。
番号は9番、2018年12月と新しい設置です。
引き下げ鉄塔というのは文字通り空中の送電線を地底のケーブルに「引き下げ」る鉄塔です。地底ケーブルがどこを通っているかは目ではわかりません。
大抵は工場があってそこで使われていたり、地底ケーブルから「引き上げ」る鉄塔が近くに見えたりするのですが、ここ御所北金沢支線9番の先は神谷内の町並みが広がっているだけでなにも鉄塔らしきものは見えません。
一体、このケーブル、どこに行っているのでしょう?
御所北金沢支線9番 地中ケーブルの先
答えはこの位置。金沢東インターすぐそばの北陸自動車道・国道8号をくぐる道路の脇。その距離なんと2km(!)
埋設ケーブルとしてはかなりの距離です。
これがその御所北金沢支線9番から繋がる地底ケーブルを引き上げる鉄塔です。道路脇にあり、プレートは道路側にあるので簡単に確認できました。
その番号は135番の1.いわゆる「のいち」鉄塔です。以前は無かった鉄塔で北金沢線135番と136番の間に新設されました。だから135の1というわけです。設置は2018年6月。御所北金沢支線9番は2018年12月でしたので、こちら側を建ててから御所北金沢支線9番まで埋設したということですね。
引き上げケーブル部には布設プレートが取り付けられていました。
御所北金沢支線とあります。埋設長も2000mと地図上の距離と一致します。間違いありません。
ちなみに北金沢線は以前紹介した北金沢変電所に最終鉄塔154番で引き留められています。19本先ですね。出発点は富山県射水市の新富山変電所。番号が物語る通りかなりの距離です。
御所北金沢支線9番から引き上げ位置を探し回ったのでもう日が暮れてしまいましたが、このパズルが溶けた瞬間のよろこび。これこそが鉄塔ファンの醍醐味なのです!