初めて行った町医者で喘息誤診詐欺にあいかけた話
「ゴホッゴホッ」
1ヶ月程前から咳が止まりません。最初は熱が出て風邪かなと思っていたのですが熱がひいてもそのまま。
毎年6月の季節になると同じような事が起きていたので近所の内科に行って咳止めと抗生物質を出してもらっていました。薬を飲むとすぐに治っていました。
今年も同じだろうと思い、また病院にいこうかなと思うもその日はたまたま用事があって隣町までいかなければいけませんでした。
用事をすませ何気なく掲示板をみると1枚のポスターが。
「その咳大丈夫?COPDの危険」
COPDとは慢性閉塞性肺疾患の略でタバコなどの有害物質による肺の機能不全のことを指すそうです。
タバコは吸わないのでまさかとは思いましたが少し心配になりました。
初診
帰道でふと横をみるとxxクリニックの看板。そこには「呼吸器科」とあります。
いつも行っている病院は単なる「内科」です。
クリニックの駐車場は1台も停まっておらず、患者の気配がありません。かといって開院時間をみるとちゃんと開いているみたいです。
たまたま空いている時間帯なのだろうと思い、思い切って入ってみることにしました。
「こんにちは、どうされましたか?」
親切そうな受付の人です。中の雰囲気も新し目でよさそうです。予想通り患者は筆者だけの様です。
問診票を書きながら待合室の壁をみます。クリニックの院長の経歴が長々と書かれています。詳しくはわかりませんが色々な団体の役員を務められている方の様です、海外も経験がありわかりませんが、そうそうたる経歴にみえます。
その履歴を囲む様に賞状が所狭しと掲げられています。出版もされている様で呼吸器界では名のある方の様です。
問診票を出すとすぐに診察室に呼ばれました。
カーテンの向こうの院長先生は年配のベテランの雰囲気。
喉をみた後に、胸と背中に聴診器をあてて何か聞いています。
「咳が止まらないだよね、1ヶ月?それは喘息(ぜんそく)だよ。すぐに喘息検査して点滴をしよう。」
喘息?聞いた事はありますがまさか自分がそうであるとは。
「毎年この季節に咳がでて内科に行っているのですが・・・そんなこと言われたのは初めてです(´□`川)」
「喘息は普通の医者じゃわからないよ。ほおっておくと50か60歳くらいで死ぬ人もいる怖い病気なんだよ。」
喘息とはアレルギーの一種で、体が外からの物質に過剰反応して起きます。ウィルスや細菌が原因の風邪症状とは異なり、抗生物質などでは治らず、アレルギーを抑える薬とステロイドの吸入で発作が起きない様にコントロールする必要があるのだそうです。ここでは漢方薬も使って体質改善をするのだとか。
検査は健康診断でやるようなレントゲンと肺活量の検査でした。示されたパターン通りに吸ったり吐いたりを繰り返します。
精一杯やっているのですが、どうも標準より低いらしく看護師さんがおかしいな的なリアクションをして不安を煽られます。
ベッドに横になり点滴の針をつけられ口には吸入器。りっぱな病人の姿です。
まさか軽い咳が続くだけでここまでの緊急処置が必要なのだとは。しかも放っておくと若くして死ぬ可能性もある。つくづく病院をかえてよかったなと感じます。
処置がおわり、院長の部屋に戻ります。そこには先ほどのレントゲンの写真が。白黒で素人目には全く異常がわかりません。
「・・・これはひどいね。10年くらい前から症状あったんじゃない?」
10年前なんて覚えていませんが、言われてみれば咳くらいしていたかもしれません。
「気管支がずいぶんと細くなっている。これがだんだん年をとると狭くなってきて最後にはつまるんだよ」
それは恐ろしい( 〇□〇)。陸で溺れる様なものです。
先生は手慣れた手つきで薬の処方を作成します。色々な薬が出されるみたいです。中には漢字表記の漢方薬も入っているようです。
「一週間後に検査結果を聞きにきてね」
特に生活上、気をつける事はなく、毎日吸入器でステロイドを吸入するくらいとのこと。
不安を覚えながら会計を待ちます。
「筆者さん、本日は検査も入りましたので7000円となります。」
う、高い。3割負担なので実質23000円ということです!
初診料も入っているのでそんなものなのでしょうか。これに薬代が加わります。
「薬は隣の薬局で出せますからね」
痛い出費だなと思いながらも病院を後にしました。
確かに隣に薬局があります。もらった処方箋には大量の薬が列挙されており見た目にも高そうです。
しかしその日はなんとなくその隣には行かずに大手のドラッグストアに行ってみました。
薬局にて
「ここでは揃わないです」
薬局の係の人に処方箋をみせたら言われた言葉。
なんでも処方された薬群の中の漢方薬が在庫されてなくてあとでの配達になるとのこと。
大手のチェーンなので他の店舗から融通するのだとか。
そんなにマイナーな薬なのかな。と思いながら会計を待ちました。
出されたのは薬の山。中には例のステロイド吸入器も入っています。ダイヤルを回してから吸い込むタイプで60回分。値段は保険が効いてもなかなかの金額です。
1日2回なので2ヶ月分。年間だと考えたくない金額になります。一生これを買い続ける必要があるのでしょうか・・・・・。
「この処方ってもしかして多い方ですか?(*´д`)」
試しに聞いてみました。薬剤師さんは困った顔。立場上コメントしにくそうです。
「・・・まあちょっと多い・・かもしれませんね」
やはりちょっと多めみたいです。
請求金額は予想通り高め。今日1日で1万以上とんで行きました。
出された薬の説明書。
- アレルギーを抑える薬A(錠剤)
- アレルギーを抑える薬B(錠剤)
- 痰を出しやすくする薬(錠剤)
- 喉の炎症を和らげる薬(錠剤)
- 漢方薬A。喉関係?。
- 漢方薬B。喉関係?。
- 抗生物質(錠剤)
- 胃薬(錠剤)
胃薬は薬剤師さんに聞いたらアレルギーを抑える薬Bを飲むと胃が荒れやすいので併せて飲むのだろうとのこと。
袋がパンパンになるくらいの量の薬を持たされて重い気分でその日は帰宅しました。
抗生物質が入っていましたが、風邪でもないのに飲むのは気持ち悪いのでそれ以外を服用することにしました。
とまらない!?
ゴホッゴホッ
一週間しても全く咳が止まりません。痰を出しやすくする薬が効いているのでしょうか。前にも増して痰が鼻水のように出てる感じがします。
2回目の診察
「先生、咳がとまらないのですが(´_`。)」
「おかしいね、どれどれ」
なにやら指にクリップを挟みます。
「治ってるね」
!?治ってないんですが!?Σ(゚Д゚|||)
「みてごらん、これは血の中の酸素濃度なんだけど、正常値になっている。一週間前はひどかったからねぇ」
どうやら息自体はちゃんと出来ているということをおっしゃっている様です。
「また薬出しておくね」
とまた手慣れた手つきで薬の処方のボタンをパチパチ押します。また多そうです・・。
「おだいじにー」
予想どうり、また薬は袋いっぱい。漢方薬も別の種類のものに変えられていました。
発作が起きた時に吸入するボトル型の薬も渡されました。グーニーズの主人公が持っているあれです。いかにも喘息患者になった気分になりました。
他の薬はほぼ前回と同じ。
また抗生物質が入っていたのでそれ以外を飲んでいました。
三週間目の正直
「先生、まだ痰が出ます(´∩`。)」
「酸素濃度は正常なんだけどねそれはストレスかもしれないよ」
「?」
「筆者さんはストレスが起きやすいタイプだね。私は見たらわかるんだ」
・・・そうなんでしょうか。さほどそんな自覚もなかったのですが、ストレスが全くないといえばそんなこともないですが、、、。
「向精神薬を処方しようか?」
「え?」
冗談かと思いました。が先生はこちらを見ています。
「・・結構です(-_-; 」
今日の薬も変わらず。週にこれだけの薬は出費としては痛いです。相変わらず抗生物質も処方されています。
口コミサイト
「向精神薬を処方しようか?」
冗談なのか本気なのかわからない言葉、気になったので病院の名前をネットで調べてみました。すると口コミサイトが検索で出てきました。
そして驚愕。そこに書いてあったのは・・・
「胃炎で診てもらっていました。そこで咳を一回しところ、”喘息かもしれないね、すぐに検査しよう”と言われ、たくさんの検査をさせられ、すぐに点滴、漢方薬もたくさん処方され高額な支払いになりびっくりしました」
「咳がでるので、診てもらいました。すぐに”喘息”と診断され、点滴の後、吸入器も含めたたくさんの薬を出されました。念のため、別の病院も行ったところ、単なる風邪と診断され、そこの薬を飲んだらすぐにおりました。先の病院で処方されたステロイド吸入器はすぐに捨てました」
・・・・
たくさんの検査・点滴・漢方薬・吸入器・・
私が体験したことそのままです。たまたまかもしれないと思ったのですが、口コミはこれだけ。
ふと思い出したのは、飲まないでおいた抗生物質。
飲まなかった理由は、風邪ならともかくアレルギー喘息であれば抗生物質は関係ないのではという理由からでした。
でもそもそも最初から風邪だったとしたら?
アレルギーの大量の薬と一緒にこの風邪薬とも言える抗生物質を飲んでいたら?
風邪だとしても、それでも治るでしょう。そして診断は「アレルギーの薬のんだら治ったんだから、やはりアレルギー喘息だったね。これからも発作が起きない様、継続してステロイド吸入してね」となります。
そして健康にも関わらず一生薬漬けになるというわけです。
疑念を感じながらも、抗生物質の封を開け口にいれてみました。アレルギーの薬は飲まないで、です。
抗生物質服用一週間後
・・・咳が止まりました。
喘息は関係なかったということです。最初から抗生物質を一緒に飲んでいたらわかりませんでした。恐ろしいことです。
肺のCTを撮る
しかしレントゲンで経年で気道が狭まっていたと言っていたのはなんだったのでしょうか。
「先生、今度人間ドックを受けるのですが、肺のヘリカルCTはとった方がいいですよね?」
「それは撮る必要はないよ。そんなんじゃ喘息はわからない」
先生が必要ないと言っていたら肺のCT。試しに撮ってみることにしました。
ヘリカルCT自体は昔とはことなり30秒ほどで終わるものでした。すぐに肺の輪切りの写真が出てきます。
CT担当医「とても綺麗ですね。健康です」
「え?長年の喘息で気道が狭まっていると言われたのですが」
CT担当医「気道ですか?まったく問題ありませんね。狭くもなっていなく正常です」
・・・・・
帰ってステロイド吸入器はゴミ箱にすてました。
おわりに
結局あれ以来、咳が出ることはありませんでした。
あの時、疑わなかったら一生高額な漢方薬とステロイド吸入をしなければいけなかったの思うとぞっとします。
金銭的にもそうですが、健康的にも必要のない薬を飲みつづけて良いことはないでしょう。
医者も人間です。間違えることもありますし作意的なことをする可能性は誰しもがあります。
アメリカの心理学者、マズローの名言に「ハンマーを持つ人にはすべてが釘に見える」というものがあります。
目の前にあるのが釘ではなくネジだとしても、手にハンマーしか持ってない人には「叩けば入るだろう」と思ってしまう様な現象です。
これは「確証バイアス」の一種で、入ってくる情報の中から自分に都合のいいものだけを知らず知らずのうちに選別して結論を決め、一度その先入観で確証してしまうとその結論に至らないような情報は無意識に捨ててしまうという心理です。
一般的な医師にもそれはあてはまります。患者の症状を「自分の範疇で」結論づけようとしてしまうのです。
極端な例で言うと、頭が痛い人が歯医者に行ったら歯医者は歯を見て見つけた虫歯が原因だ思ってしまうということです。
日本の医療に本当必要なのは優秀な専門医ももちろんですが、「まず何科にいくべきか」を適切に判断してくれるコンシュルジュ的な役割の人なのかもしれませんね。
了