歴史の七ヶ用水と鶴来送電線をめぐる (石川県白山市)

先日紹介した南金沢変電所から南に伸びる鶴来第1・第2線。その先にある鶴来変電所について調べていたら七ヶ用水と関係があることがわかりました。

今回はそんな七ヶ用水を軸に石川県白山市鶴来地区の送電鉄塔をたどってみようと思います。

川北町・白山市・金沢市は手取川の扇状地です。もともとは手取川からそれぞれの地区に用水を引いていたのですが、水流が安定しない為、幾度と不便が起こりました。

それなら水が豊富な上流から別に大きな用水を引けば良いと作られたのが七ヶ用水です。

七ヶ用水の目的

七ヶ用水は当初は農業の灌漑用のみだったのですが、幾度の改修で取水口はさらに上流に移動され、途中にはその水流を利用した発電所が建設されました。

南金沢変電所からの鶴来第1線と第2線の接続

南金沢変電所からの鶴来第1線と第2線のトリッキーな接続

さて南金沢変電所の77kV系からは鶴来線として2回線出ていますが、ともに南金沢線に併架したあと1回線は手取幹線と併架、鶴来第2線の1回線のみ南金沢線を伝い、町中に独立して南下しています。

西側手取幹線には鶴来第1線が乗っかる

鶴来第1線の方はそのまま手取川の方に手取幹線と共に直進。

七ヶ用水地図(クリックでpdf)

そしてその手取川の直前に地図の七ヶ用水の明島発電所があります。

明島発電所

明島発電所と明島支線1番

横の明島支線1番からは鶴来第一線に接続されて電力供給されています。

明島支線との接続部と手取幹線・鶴来第1線

(明島発電所からはさらに地中トンネルで下流の七ヶ用水発電所の設備に給水されています。そちらは北電管理ではなく自家発電用の様です。)

鶴来第1線のレガシー鉄塔

明島支線が接続された鶴来第一線と上の手取幹線は独立して手取川を渡ります。鶴来第一線は1回線ですが、ここで2回線にジャンパーで分岐しています。(バランスの為?)

鶴来第1線12番

鶴来第1線の手取川前後には古い鉄塔がならびます。アクセスがよいのは対岸の鶴来第1線12番。

1930年(昭和5年)北陸幹線敷設時代

銘板を見ると1930年(昭和5年)とあります。北陸幹線が1929年(昭和4年)なので、ちょうどその時期の設計なのでしょう。

鶴来第1線12番 歴史を感じる

手取川へ向かって河を渡る14番は新し目なのですが、それを対岸で受け止める15番も12番と同じ時代のもので未だに長い距離の送電線を支えている事に関心します。(と言っても昭和47年頃ですが)

宮竹用水と沈砂池

さて、対岸には七ヶ用水と関係の深い宮竹用水の沈砂池があります。

対岸の七ヶ用水から逆サイホンで手取川をくぐってくる

なんとこの宮竹用水、対岸の七ヶ用水から逆サイホンで手取川をくぐってきているのです。逆サイホンといえば金沢市の辰巳用水も同じ原理でした。

逆サイホンの原理は水が入った容器とホースなどを使えば簡単に実験できるのですが、それを昔の人がこの巨大な規模で作ったことに驚きます。

宮竹用水の沈砂池

手取川をくぐってきた水はこの施設で砂と分離されます。

宮竹用水の変遷

周りは公園になっていて散歩も楽しめます。案内板も充実しています。

さて、また対岸に戻り七ヶ用水を追いましょう。南金沢変電所からの鶴来第2線も近づいてきます。

鶴来第2線をたどって鶴来変電所へ

鶴来第2線をたどればすぐに鶴来変電所の位置はわかります。

よく見ると一般的な変電所と異なり2つの土地にわかれています。そしてその間には・・・・線路!

世にも珍しい鉄道廃線をまたぐ変電所 鶴来変電所

そう、鶴来変電所の鉄塔と施設の間には廃線になった北陸鉄道石川線跡があるのです。全国でも珍しいのではないでしょうか。

鶴来発電所3本。左から鶴来(第1第2)線1番、くちばしの能美線1番(手取線59番)、右は能美線2番(手取線58番)

ゲートの表示は手前から鶴来線、能美線、手取線。鶴来線は2回線として扱われています。鶴来第一と第二はそれぞれ1回線の筈ですがどういうことでしょう。

鶴来第1線(左)と第2線(右)が合流する鶴来第一線2番鉄塔そして変電所横の1番へ

答えは少し歩いた鶴来第一線2番鉄塔にあります。ここで鶴来第1線(左)と第2線(右)が合流しているわけですね。第2線は今辿ってきたばかりですが、第1線はどこから来たのでしょう。

国道157号から目立つ能美線3番の赤白鉄塔

国道157号から目立つ能美線3番の赤白鉄塔。これをよく見るとわかります。一番下が山の方向から来た鶴来第1線。それが先程の2番鉄塔に繋がっているというわけです。

能美線3番昭和61年10月手取線57番1986年10月(つまり同じ)

上の回線は手取線と能美線。能美線は鶴来第1線と一緒に山の中へ向かっています。ちなみに鶴来第一線のプレートは国道側にあります。

鶴来第1線は1回線。ジャンパーで折り返して工場へ?

しかし山へ向かう回線は3回線ではなく4回線。よく見るとジャンパーで折り返してるのがわかります。どうしてこうなっているのかは不明。

鶴来変電所周りの鉄塔接続

まとめるとこんな感じになります。

水:鶴来第2線/黄:鶴来第1線/緑:能美線/ピンク:手取線

鶴来変電所横の3本、水色が鶴来第2線、黄色が鶴来第1線そして緑が能美線、ピンクが手取線です。

能美線3番・手取線56番・鶴来第1線3番

その先の赤白鉄塔。能美線3番・手取線56番・鶴来第1線3番の併架となります。

緑の能美線と黄色の鶴来第1線は手取川対岸へ、能美線4番・鶴来第1線4番

緑の能美線と黄色の鶴来第1線はそこから手取川対岸へ、写真は能美線4番・鶴来第1線4番です。

鶴来発電所

鶴来変電所横、七ヶ用水の流水を利用した発電所

さて、変電所の配線を楽しんだら西側に歩いてみましょう。七ヶ用水の流水を利用した鶴来発電所があります。

こんな町中に流水を使った発電所があることに驚きます。

さて、辿ってきた送電線鶴来線はここまで。ここからは七ヶ用水を辿ります。

突如電柱に繋がっている鉄塔は手取川横断用

国道157号線を南に。途中で電柱に繋がっている鉄塔を見かけました。手取川横断用と思われます。ということは6.6kV?

大水門と白山発電所

大水門

道の駅がありますので駐車場して手取川の横まで歩きます。ここから七ヶ用水の祖である枝 権兵衛(えだ ごんべえ)が掘った取水口が見れます。

現在では使われておらず、その奥の地下に七ヶ用水が流れています。上に見えるのは白山発電所兼管理事務所。2階は開放されており平日16時までなら展示の見学ができます。

公園の横の給水口

公園の横の給水口は上流の取水口からトンネルを通ってきた流水が地表に現れます。古い設計なのが見てわかります。

白山発電所の横の公園は軽い散歩が楽しめます。枝 権兵衛が掘った位置を確認できる案内板や、ルーブル?っぽいモニュメントも。

石川では珍しいモノポールに接続

白山発電所の出力は横の鉄塔から手取川を横断しています。受け止めているのはこの地方では珍しいモノポール鉄塔。道の駅からすぐ下まで行けます。

埋設された先は不明

この先は引き込まれて埋設されているようです。

さらに国道157を進むと現在の取水口、白山頭首工があります。ここから発電用と農業用の用水が先程の白山発電所に流れます。

白山頭首工

白山頭首工は改修中でした(2019年)

この時期は改修中で用水の流れもありませんでした。春先に給水される様は迫力がありそうで楽しみです。

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