高野山揚原山とコバルトブルーの蟹淵池 鍋谷和佐谷線駐車場より周回(7.2km+295m/石川県能美市/登山・トレイルラン)
今回は石川県能美市の高野山揚原山の蟹淵経由周回登山ルートを紹介します。
能美市の山といえば射水観音山と高野山(たかのやま)揚原山(あげはらやま)というくらいメジャーなスポットで、土日にはハイキングを楽しまれている方の多い人気の山です。
特にルート途中にある蟹淵(がんぶち)池は、山の池なのにコバルトブルーに見えるという不思議な場所で大蟹の伝説も伝わるとても神聖な空気のスポットです。
大抵の山岳ガイドや自然観察ガイドでは高野山側から登る時計回りで紹介されていますが、ここでは蟹渕・揚原山から登り、高野山に縦走して降りる反時計回りルートをオススメします。理由は蟹渕周辺は苔が多く下りにはちょっと危ないこと、高野山からの下山は送電線巡視路を使う為、下りでもプラ階段で足場がしっかりしており安全なこと、周回全体としても北側の街並みがよく見えることからです。
目次
高野山・揚原山・蟹淵周回地図(GPXトラックログ)
登山口までのアプローチ
高野山揚原山は西の能美市方向、東の鶴来方向どちらでも登山口にたどり着けますが、西の能美市からのアプローチのほうが簡単です。
県道22号線(加賀産業道路)から上八里町を左折、県道54号経由で県道297号に東に進み盆地を走ります。
のどかな盆地を走ると右手の3つの尾根に均等に鉄塔が並んでいるのが見えます。関西電力大黒部幹線です。北陸最長の全長245kmを誇る送電線、富山県南砺市城端開閉所と大阪府高槻市北大阪変電所を結んでいます。その数なんと700以上。でここの番数は奥から99番、100番、101番で、ちょうど城端からのキリ番の地点となります。
道なりに沿って進むと今度は同じく右手の尾根の頂上に別の鉄塔が見えます。これが今回の目的地、高野山(たかのやま)にかかる北陸電力加賀東金津線の鉄塔となります。見えるのは50番。高野山の横のピークにあるのが47番、そこから登山道沿いに48番、49番と来て、今から通る林道鍋谷和佐谷線をまたぐのが49番と今見えている50番です。番数が小さいのは1番鉄塔が石川県内の加賀変電所だからですが、そこから国見山を通ってくるなど、白山麓の里山歩きにはよい目印です。
枝谷口に案内板があるのでそれに従って左折しましょう。ここからが林道鍋谷和佐谷線です。
林道鍋谷和佐谷線は見ての通り高野山と揚原山の稜線まで至っています。西からアプローチしたのはそこで、峠越えをしなけばいけないことと、今から登るところを車で通るのは無粋かなと思った為です。
GANBUCHI(ガンブチ)じゃなくてGANBUTI(ガンブティ)なのがポイントですね。
今回はオススメの蟹淵(がんぶち)からの逆まわりルートなので一旦高野山登山口はスルーしてまっすぐ走ってください。
駐車場はかなりの台数停められます。蟹淵にもありますが閉鎖されていることが多いのと、結局戻ってくることになるので、ここに駐車されることをおすすめします。
蟹淵分岐まで鍋谷和佐谷林道を歩く
林道鍋谷線は真っ直ぐ行くと峠を越えて白山市鶴来まで至ります。過去は全未舗装でちょっと奥地めいた雰囲気が良かったのですが現在は全線舗装済みです。
蟹淵(がんぶち)案内板があるので右に入っていきます。車両が入れなくなっていますが歩行はOKなので安心してください。
ここで会う人はほぼ100%熊鈴装備していますので忘れないようにしましょう。「登山を控える」は確かに最強の対応ですが
ここからはふかふか未舗装路です。杉林は続き森林浴ムードです。
左手に尾根が降りてきて丁度先端が見えました。国土地理院で見ると鍋谷和佐谷線が走っている尾根の先端部分みたいです。こんな岩になっているのですね。
徐々に高度を上げていきます。美しい渓流沿いはこれを見るだけでも価値ありです。
やがて(元)駐車場用ペース、続いて旋回用のスペースがあり蟹淵入り口に到着します。右沿いにそのまま登れます。足元は滑りやすいので気をつけてください。
大蟹伝説の蟹淵
標高268mの高所にある蟹渕(がんぶち)は、周囲300m、深さ6.7mを測る。コバルトブルーの水をたたえ、古くから大蟹が棲む渕として畏れられ、夏の渇水期には甘合意の場にされるなど、人々の伝承が行き着く地である。
通常は標高1000m以上の高地に生息する隊長cmたらずのルリイトトンボや、樹上で産卵するモリアオガエルなど、北陸でも特有の生態系を持つ地として知られている。
6月の降雨期には、モリアオガエルの白い泡状の卵塊が無数にぶら下がり、まるで一面に白い花が咲いたような光景になる。
秋には茜色のトンボが舞い飛び、冬は深山一面に広がる銀世界と、四季を通じて折々の姿を見せてくれる。野生動物の種類も豊富で貴重な自然環境として大切にしていく必要がある(昭和39年5月1日天然記念物指定)
蟹渕から揚原山稜線へ
蟹淵を左に巻いて抜けたら突き当りに看板があります。
この時期、意外と流れ込みは少なく登山道沿いの一本のみ。
この流れ込みに沿って揚原山稜線に向かうことになります。
岩の大きさがましており迫力があります。まだまだ苔むしているのでスリップには注意してください。
何度か沢と登山道が交差することになります。丸太が架けられていますが信用しない方がいいかもしれません。
更に交差。この先の看板から急上りとなります。
奥の方に滝のようなものが見えました。
すぐに尾根と尾根の間の谷部分に突き当り、東側の尾根に入ります。
こちらは打って変わって杉林。広い道で登山道を見失いそうになりますが、踏み跡をよく見れば迷うことはないでしょう。
かなり等高線が寄っているところですが、蛇行して道が切ってあり安全に稜線に出られます。
391m。駐車場から約+200mくらいの高度です。お疲れ様でした。まずは点線の南側、揚原山に向かいましょう。
稜線から揚原山山頂へ
揚原山高尾山稜線歩きは快適そのもの。ブナと赤松が植えてあり里山ムードを楽しめます。
頂上手前、変わった切り株がありました。魔女の手(仮称)と名付けました。
ところどころ景色が見え、左手には後高山、右手には観音山方向がちらちらみえます。
なだらかな道を一度登り返して、その先に道が切れて空が開けています。揚原山頂上です。
頂上は手取川源流方向、能美市街地方向が切り開かれており展望と休憩が楽しめました。
鉱山があるらしく、引き落とされた山肌が生々しく見えるのが印象的でした。
ここが本日の最高点となります。
揚原山山頂から展望台、そして東屋(鍋谷和佐谷線)へ
さて、揚原山で休憩した後は高尾山まで約3km、稜線歩きを楽しみましょう。
先程の分岐を今度はまっすぐ。
揚原山と高野山間は平坦で足元もよく、トレイルランにもぴったりの道です。鍋谷和佐谷線分岐まで車で来て、稜線歩き(走り)だけを楽しむのもまた面白いかもしれませんね。
杉は奥の方にあるだけで、道沿いは基本的に赤松とブナです。あとユズリハがよく見られました。
こんな木にマツボックリ?
展望台手前の山火事注意の看板が味がありいい感じでした。注意します。
やがて左手に向こうの山と鉄塔が見え始めます。これが高野山手前、大黒部幹線47番鉄塔です。いまからこの真下に向かうことになります。
展望台前には巨大な老いた松が2本ありとてもが迫力ありました。
なんだか芸術作品を見ているようです。これが見えたら展望台はすぐです。
展望台はただの広場で丸太が置いてありベンチ?として使えます。ここまできたら目的地の高野山がはっきり見えます。
この稜線をつかって向こうのピークまで行くことになります。その左下の谷底が元来た駐車場です。
右に覗き込むと舗装路、鍋谷和佐谷線林道がみえました。
林道へは右に巻いております。足場がやや悪いので注意してください。
舗装路を横断してそそくさと高野山登山道へ行きましょう。(ここに車ドライブの人がたくさんいるとちょっと山登り感が半減して興醒めします笑)
東屋から加賀東金津線47番鉄塔、そして高野山山頂へ
あずま屋は先程の所からプラ階段ですぐの所にあります。展望は全行程で一番よい場所と思われます。
手取川扇状地から奥には海。右手は後高山倉ヶ嶽の尾根が伸び、その尾根から関西電力北陸幹線、関西電力大黒部幹線がこちらに伸びてきています。そのさらに南側から降りてきているのが今そこに見える加賀金津線というわけです。(ちなみにそのさらに南に最大級の加賀幹線が手取第三ダムの上経由で降りてきます)
それらと直交するように街のほうから来ているのが南金沢変電所発の手取幹線です。あずま屋からは手前の尾根をドミノの様に登ってきているのがよく見えます。ちょうど加賀東金津線と交わっている地点が手取幹線52番と加賀東金津線42番となります。そこから43番、44番と視認できるのですが(要双眼鏡)、45番だけは山の陰に隠れて見えません。46番は先程から見えて47番はいまから通るので加賀東金図線45番は幻の鉄塔と言えそうです。
さて、景色も十分楽しんだので先に進みましょう。東屋の右手奥から道は伸びます。ここからはしばらくだけ階段が多くなります。
最初の分岐、ちゃんと案内があるのでしたがって道なりです。(右は送電線巡視路でその先は谷底です。国土地理院によれば北の大口町まで繋がっているのですが、そこから駐車場まで行くのは困難そうです)
高野山にしても揚原山にしてもその間の稜線はとても素晴らしいのですが、それぞれ頂上からちょっと戻らなければいけないのが惜しい所ですね。揚原山の西側稜線から高野山南端までを繋げられたら綺麗な周回に出来そうなのですけどね。
そんなことを考えていると道はフラットに、次の合流地点に来ました。加賀金津線幹線46番との合流地点です。距離もそれほどではないので鉄塔好きの方は立ち寄っても良いかと思いますが、ここでは真っ直ぐ進みました。
さっきから右手に2導体(2本一組)の迫力のある送電線が見え隠れしてきます。
頭上の赤松とブナの木が一斉に晴れみえたのは。
加賀東金津線47番。ずっと遠くから見えていたのですが、ようやく会えました。なんてことないオーソドックスな男鉄塔(ガイシが垂直になっている)ですが感動はひとしおです。
ブナと鉄塔のゲートが迎えてくれます(まだゴールではないですが笑)
結界(鉄塔の真下のこと)まで入れました(というか登山道が結界を通ってる。見上げる幾何学模様が眩しいです。
若番方向の銘板を見ると1968年(昭和43年)。もうややご年配ですね。ちなみにこの加賀東金津線は福井県あわら市のその名も東金津変電所に接続されており、最終番数は152番です。ここからまだ100本以上も伸びているのですね。
高野山山頂から送電線巡視路へ
高野山山頂まではやや登り返しになります。といっても大した傾斜じゃないのでさくっとたどり着けるでしょう。
高野山山頂372.8m。先程の揚原山よりちょっと低いくらいですか。展望は街側が切り開かれています。国土地理院によればこの先も道はあるはずなのですが、ちょっと見つかりませんでした。
しばし眺めを楽しんだら駐車場に戻りましょう。道はUターンです。
高野山からの下りは案内標識がなぜか無いので注意してください。この位置、鉄塔巡視路48番を目指してぐるっとまわります。
ここからは等高線の寄った尾根の直降りになります。プラ階段と木の根っこが足をグリップしてくれます。
道の先に見えるたくましい山形鋼の足。次の鉄塔です。
加賀東金津線48番。さっきのが47番だったのでその次というわけですね。必ず連番になっているのが鉄塔巡りの楽しいところです。
右手にプラ階段が伸びてるので更に進みます。
なかなか急なのですが、プラ階段はグリップもよく設置性も耐久性にも優れた最強階段なので助かります。
290m地点くらいから木が切り開かれて眺めが良くなっていました。頭が見えるのが次の49番ですね。
脇のカラーが印象的。(極性というか位相を表します)
見ての通り、この鉄塔からは鍋谷を渡って次の鉄塔まで送電線が送られています。もちろん次は50番。そう、最初に車で来た時に見えた鉄塔ですね。双眼鏡があれば更に楽しめます。
それにしても加賀東金津線49番はすごい所に建ってますね。それだけ岩が強固なのでしょうか。
これで加賀東金津線も見納めです。お世話になりました。
高野山登山口から駐車場へ
ここからは杉林です。あまり手入れされて無さそうですが、ちゃんと蛇行して降りやすいように登山道が切られています。
20mほど降りると、みなれた苔むした沢。そう、蟹淵付近のあの雰囲気ですね。スリップ注意。
やがて舗装路に出ます。見たことある看板は高野山の登山口です。来る時前を通りましたね。
駐車場は200m弱。最後の森林浴を楽しみましょう。