フェールソフト/フェールセーフ/・・10つをかんたんに覚える方法
一発暗記!たくさんある紛らわしいフェイル用語の違いを実例を交えて覚え方を紹介します。
[]
目次
10のF用語
資格試験によく出てくるこれらFのつくF用語。これは「対障用語」といいます。ざっと挙げると以下の通り。
- フォールトトレラント(Fault Tolerant)
- フォールトトレランス(Fault Tolerance)
- フォールトアボイダンス(Fault Avoidance)
- フォールトマスキング(Fault Masking)
- フールプルーフ(Fool Proof)
- フェールセーフ(Fail Safe)
- フェールソフト(Fail Soft)
- フェールオーバー(Fail Over)
- フェールバック(Fail Back)
- フォールバック(Fall Back)
似た言葉ばかりで見るだけで頭が混乱してきますね。
ウォーミングアップの魔法の呪文
まず、それぞれの解説を見る前に下の呪文を唱えましょう。20回は繰り返します。
「フォールトに備えてたのにフールがフェイルを起こしたのでフォールした」
「フォールトに備えてたのにフールがフェイルを起こしたのでフォールした」
呪文の意味
呪文を繰り返しているうちに、だんだんニュアンスがわかってきたのではないでしょうか。言葉は10個ありますが大別すると最初のワードはたった4つしかありません。
「フォールト」と「フール」と「フェール」そして「フォール」です。
しかも「フール」と「フォール」に関しては1つだけです。
呪文のニュアンスの通り「フォールト」は備えるもの、「フェール」は起こったもの、それを強く意識しましょう。
用語辞典をみてもピンと来ないわけ
それぞれのF用語を個別に用語辞典でみてもいまいちピンと来ません。どれも同じ様な説明が書いてあり区別できません。
それもそのはず、これらは違う言葉ではなく、重なっている言葉なのです。
まずはフェール3兄弟
呪文でフォールトとフェールのニュアンスの違いを感じられる様になったらまずフェールから覚えましょう。4つありますが覚えるのはたった3つでOKです。理由は後ほど。
頭の中に「フェールの箱」を3つ用意してください。さあ、いきますよ。
フェールセーフ
フェールセーフ。セーフ、安全です。
運転中にドライバーが意識を失った場合にスピードが上がるのと下がるの、どちらが安全ですか?当然、スピードが下がったほうが安全ですよね。だからアクセルは離すと勝手に戻ります。
このようにフェールが起きた時に安全な停止方向になる設計がフェールセーフというわけです。
踏切の遮断機は故障した時に重力で下がるようになっています。もし逆だったら車が進入して安全ではありません。
信号機は制御部が故障した時に赤点滅するようになっています。これももし無灯火や青になったら事故の危険性が高まります。
電車のエアブレーキは空気圧をかけづづけなければスプリングでブレーキがかかる仕組みになっています。
フェールセーフは「制御し続けないかぎり作動部は停止方向に動作させる」という設計です。
フェールソフト
フェールソフト、ソフト、柔らかさです。
空中で飛行機のエンジンが片方止まったとしましょう。ここで全機能を停止させてしまうと不時着もできません。そこで故障したほうのエンジンだけは燃料遮断しもう片方のエンジンだけで飛べる様に設計されています。
このようにフェールがおきた時にでも、なんとか動作を継続させるという設計がフェールソフトというわけです。
補助電源付きコンピューターは停電時でも補助電源により安全にシャットダウンさせるだけの電力はまかなえます。
自転車や車のブレーキは前後が別系統にわかれており例えば後方が故障してももう前方のブレーキは動作し、修理工場までは自走出来るようになっています。
エアコンやテレビはリモコンの電池が切れた場合でも最低限のオンオフ操作は本体で出来るようになっています。
フェールソフトは「作動部が一部動作しなくても制御続行可能にする」という設計です。
フェールセーフが主に制御部のフェールの話だったのに対してフェールソフトは主に作動部のフェールの話であることを意識しましょう。
フェールオーバー
最後はフェールオーバー、オーバー、超える。なにを超えるのでしょう?
大型旅客機は機長と副操縦士の二人が操縦しています。機長が突然気を失ったらどうしましょう?副操縦士が「フェールオーバー」して運転続行します。
このようにフェールが起きた時にでも、完全にそれを補完する事ができ、その補完状態になることをフェールオーバーというわけです。
コンピューターの記録装置の中にはミラーリングという仕組みがあり、常に同じ情報を2箇所に記録します。片方が故障してももう片方にフェールオーバーして動作続行します。
ネットワークサーバーも全く同じサーバーを2台用意しておき、片方が故障した場合にもう一台にフェールオーバーさせる構成のものもあります。
悪路用自動車で後ろに予備タイヤとして常用タイヤと同じ物が付いているのを見たことがあると思います。これもパンク時に性能を落とすこと無く予備タイヤにフェールオーバーさせる仕組みです。
フェールオーバーは簡単に言えば「予備に切り替えること」です。そして最後のフェール、フェールバックは「フェールオーバーした予備から戻すこと」。つまりこの2つはセットというわけですね。
フェールセーフやフェールソフトは設計思想であったのに対してフェールオーバー・バックは「事」であることも違いです。あえて思想的に言うなら「フェールオーバー可能設計」といったところでしょうか。また、フェールオーバーは予備の話である為、制御部・作動部、両方を含んだ話となります。
ついでにフールとフォール
さて、フェイル3兄弟を覚えたら次の一人っ子達、フールとフォールもついでに覚えてしまいましょう。
フールプルーフ
フールプルーフ、フールは愚か、プルーフは耐えるといったところでしょうか。
「大抵の人は説明書を読まない」のでそれに備えましょうね。という話です。
オートマチック自動車の運転モードは安全スイッチを押しながらでないと停止モード(パーキング)から移動させることができません。
パソコンやスマホの電源スイッチは実際には電源は直接切らず、シャットダウンやスリープに入り急な電源断によるデータ破壊を防ぎます。本当に電源を落とす場合は長押しなど特殊な操作が必要です。
火災警報器や消化器にもカバーやピンがあって安易には動作させられないようになっていますね。
この様に、フールプルーフは、危険や混乱に繋がる制御はあえて難解にするという人に対する設計思想です。フェール3兄弟と異なりフェールを起こしにくくする為の考え方です。
フォールバック
フォール、落ちる。何が落ちるのでしょう。フェールバックと名前が似ているので初見では混乱しますが、先程の呪文を繰り返して頭の中で区別出来るようにしておきましょう。
日本人とタイ人が話すとしましょう。お互い、相手のタイ語も日本語もわかりません。そこでお互い少しだけ使える英語に「フォールバック」して会話します。
これは、システムが絡まない例えですが雰囲気はわかると思います。主に通信や暗号・ソフトでお互いが疎通できない時や機能が足りない時に下位方式に落として利用するのがフォールバックです。
4Gスマホは基地局が古く4Gが使えない場所でもフォールバックして3Gで使えます。
PCゲームもハードウェア性能が低かったり個別の機能がない場合は映像の質をフォールバックさせ、ゲーム自体は動作させられます
ブルーレイプレイヤーは古いモニターに繋いでも、映像の解像度をフォールバックさせ映像自体は見ることが出来ます。
フェールバックは、先程の機能は落としても制御継続させるフェールソフトと似ていると感じませんか?実際に考え方的には重なっているのです。違いはフェイルソフトがフェールの後の話なのに対してフォールバックはフェールを起こしにくくする為の考え方だということです。
そしてフォールト
フェール3兄弟とフールとフォール。この5つを覚えてしまえば、もう10のF用語はマスターです。
フォールトはどうしたって?
実はもうフォールト4つは覚えてしまっているのです。フォールトは「フェールに備えるもの」でしたね。
フェール3兄弟はフェールが起きた後の話、つまりフェールが起きることが前提の話です。これらこそが「フォールトトレラント」なのです。トレラントは許容と言う意味です。
他方、フールとフォールの一人っ子達、これらはフェールを起こさないことの話です。これらを「フォールトアボイダンス」と言います。アボイダンスは避けると言う意味で文字通りフェールを避ける考え方です。
また特にフェール3兄弟の内、フェールオーバーは故障時でも完全に状態補完できていました。これは外部から見たらフェールが起きていない(マスキングされた)のと同じです。これが「フォールトマスキング」です。こちらはシステムの外から見た話で、例えば冗長符号によるエラー訂正もフォールトマスキングに含まれます。
フォールトトレトラントとフォールトトレトランスは形容詞と名詞の違いなだけで意味は同じです。
これで10個。理解完了です。対障用語は、このフォールトとフェールのニュアンスと重なりが紛らわしいポイントだったというわけです。
おまけ
最後におまけで紛らわしい以下の英語について理解する呪文も記載しておきます。
- fault
- defect
- failure
- malfunction
- error
「フォールト」に備えていたが「デフェクト」が原因で「エラー」が検出され「フェーラー」や「マルファンクション」が起こった。
以上です。