スーパーカブ110プロJA10のレビュー 14インチの走行感
概要
ホンダカブは50年以上前から生産されているオートバイのシリーズです。特徴のある自動遠心クラッチとロータリー式ギア機構と驚異的な燃費で半世紀をこえた今もビジネスユースはもちろんの事、ホビーユースのファン達の心を捉えて離しません。
スクーターとバイクと比べて
筆者はオートバイには3種類あると考えます。スクーター・バイク・そして「カブ」です。
スクーターはおなじみでしょう。自転車と同じく左手は後ろブレーキ、右手は前ブレーキ、ひねるとアクセルです。無段階変速機構でミッション操作は一切不要で、足はのせておくだけです。
対してバイクは左手にクラッチ右手に前ブレーキとアクセル、左足は上下でコントロールするミッション、右足にブレーキといった構成で、四肢をすべて駆使するスポーティーさがあります。
そしてカブはスクーターとバイクの中間と言ってもよいでしょう。右手は前ブレーキとアクセル、右足は後ろブレーキなのはバイクと同じ。左足はミッションなのですが上下ではなく上下のシーソーのようなペダルを踏むことでミッションが上下します。左手はレバーすらありません。
こんな構成なのには本田宗一郎がソバ屋が片手でオカモチを持ちながら出前できる様にとの逸話があるのだそうです。なるほど、右手右足左足だけでカブの操作は出来てしまうので左手で物をもっても走行出来そうです。(ただし乗ってみると実際にソバをこぼさずに運ぶにはかなりの技能がいることがわかりますが)
ミッションを足で跳ね上げる必要がないので、靴も選びません。なんと長靴でも乗れてしまいます。ギアを入れたままの状態では前身方向には動きませんが、バックはニュートラルの様に進めます。駐輪場などでの取り回し性能につながります。
プロの特徴
2009年からのJA07モデルには宅配向けの「プロ」モデルがラインアップされており、これは2012年モデルのJA10にも引き継がれています。
プロの特徴はノーマルモデルのホイールが17インチなのに対して14インチになっていること、大型バスケットとリアキャリア、ヘッドライトのバスケット前への移設、強化サス・スタンドが挙げられます。
JA10からはフォークではなくボディにヘッドライトとバスケットが接合されるようになり、荷物を入れた時でもハンドルが重くならない様に改良されています。
この記事ではこれから特にJA10スーパーカブプロの購入を検討されている方の為に、実際に乗ってみたレビューを紹介させて頂きます。
14インチホイール
プロかノーマルかで迷った時に、一番気になるのがホイールの大きさだと思います。ノーマルは17インチなのに対してプロは14インチです。
一般的に車両のタイヤの直径は大きければ大きいほどジャイロ効果により走行安定性が高まると言われています。例えば自転車なんかで20インチ程度の小径車ではハンドルから手を離すと舵がすぐにぶれるのに対し、27インチでは多少手をはなしても安定しています。
なのでプロの購入を迷っている人は「高速時にぶれるのではないか」と心配することもあるかと思います。
結論としては「カブの速度域では全く問題無し」です。
実際、他方の直進安定性の要素であるホイールベースはノーマルの1.210mから比べて1.225mと多少ですがのびており、比較的重心も低く、70km/h程度でも十分な安定感があります。それより上、80km/h以上になると気持ちふらつきを感じますが、そもそもエンジンがそれ以上まわらないので問題ないと思います。
小径である分17インチよりも重量的に軽く、小回りもきくので細い路地や狭い車庫内での取り回しもよい、横風の影響を受けにくいといったメリットもあります。
デメリットは、階段のような段差を超えるのは難しいことと、タイヤの市場価格が17インチと比べて高い事くらいでしょうか。
ライト
JA10プロのライトはフレームに取り付けられています。これはつまりコーナリング時においても車体の正面を照らし続けているということです。JA07やノーマルのJA10はハンドルに取り付けられているので、コーナリング中はやや内側を照らす事になります。
バイクで例えると、JA10プロはレーサーレプリカ、JA07やノーマルはネイキッドやアメリカン・オフロードの照射に近い感じです。
実際に夜間走行してみた感想としては、高速・中速コーナーではほとんど気になりませんが、ややタイトなコーナーだと、もう少し内側を照射したいなという印象です。常に車体正面を照らしているのでコーナーの先はやや暗くなります。
とは言え、高速コーナーにおいてはむしろ先が照らされる分、こちらは視認性がよく感じました。JA10のヘッドライト自体、過去モデルと比べて明るめであることも影響しているのかもしれません。HIDキットも発売されているので、光量を増やして内側をカバーするのも手です。
キャンプやデリバリーなどでカゴを満載にしてもヘッドライトの照射を妨げない設計はプロ共通です。
ギア比
これは意外だったのですが、カブプロ日記さんにも書かれている通り、スーパーカブのプロはノーマルよりもギア比が高いのだそうです。積載向けなのにギア比が高い?のも不思議ですが、二人乗りではないからという理由は納得できるものがあります。
なので同じ60km/h巡航でもノーマルよりもエンジン回転数はわずかに低く、音も小さめでストレスが少ない走りができます。
高速走行
高速走行はタイヤの径で書いた通り、エンジン出力の範囲内では十分安定感があります。ただし、カブ共通に言えることなのですが、横風にはやや煽られる感じがあります。これはレッグガードの影響だと思われます。
レッグガードは走行風に大しては効果絶大で、前からの走行風に大しての疲れは軽減されます。定番のウインドスクリーンとハンドガードを装備すればまるで車のような快適さが得られます。
ワインディングと峠
実はカブはワインディングが楽しいバトルマシンです。
アップダウンが多いとスクーターではエンジンブレーキが弱い分、速度コントロールがしにくい難点があるのですが、カブはミッションバイクと同じく、エンジンブレーキによりアクセル操作のみで調整ができます。
またミッションバイクではコーナーが続くとどうしてもクラッチ操作で左手のグリップが甘くなってしまいますが、カブはセミオートマである為、ガッシリとハンドルをホールドできます。その走行感は人馬一体とまではいきませんがなかなかのものです。
思えばセミATは車ではスポーツモデルやレース車両で搭載されている構成です。
つまりスーパーカブは
こんなのや
こんなの、
さらには
こんなのとかと同じDNAが組み込まれているということです。楽しくないわけがありません。
街中走行
細い路地をクネクネと縦横無尽に走り回るのは郵便局や新聞配達のデファクトスタンダードになっているカブプロの最も得意なステージであるのは言うまでもありません。
横から見るとわかりますが、大抵の単気筒バイクでは縦になっているエンジンがカブは前に寝かせた造りになっています。これは空冷の冷却効率があがるのはもちろんの事、このシリンダを水平にする事で重心が低くなり安定性を高める要因ともなっています。つまりスーパーカブは
こんなのや
こんなの、
さらには
こんなのとかと同じDNAが組み込まれているということです。楽しくないわけがありません。
どこで買うか
新車・中古・町のバイク屋・大手チェーン・通信販売、それぞれメリット・デメリットがあります。価格・保証・おまけ・メンテの安心感、出先での対応等、自分のスタイルにあった方法で選べばよいでしょう。
ちなみにカブくらいのクラスだと、新車の値引きはほとんど期待出来ません。通販はある程度安いですがよく見ないと送料が高かったりするので注意しましょう。
整備性は原付エンジンでセンタースタンドもありそれほど悪くないので、バイク屋に頼らずにサービスマニュアルで自分で全部メンテしてしまうのも面白いと思います。